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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『隕石誘拐』

書名出版社
隕石誘拐光文社カッパノベルス
著者出版年
鯨 統一郎1999



Jul 15 (thu), 1999, 19:19

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

「邪馬台国はどこですか」で一世を風靡した鯨 統一郎氏の長編第一作である。邪馬台国のときもそうだったが,この人が書きたいのは定説への挑戦であり,物語は2の次なのだと思う。定説への挑戦を語るのに相応しい道具立てを揃えることを第一義として,物語を構築しているように思う。

本作は,宮沢賢治文学についての異説を唱えることを主眼としているのだと思うし,ぼくは宮沢賢治には詳しくないので正当な評価はできないのだけれど,ぼくには目新しい解釈だった。その意味では成功している。宮沢賢治を語るのに相応しい道具立てといえば,ディストピア指向のファンタジーであるように思う。従って,本作は推理小説ではなく,ファンタジーとして読まれるべきであろう。そうした物語部分は,生きている人間の言葉や行為としては陳腐に過ぎる気もするが,頭にファンタジックなイメージ映像を膨らませるには十分成功していると思う。

だから,この作品は,もしかしたらミステリ読みからの評価は低いかもしれない。が,ぼくには上記の意味で面白かったので,次作も読んでみようと思う。


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