最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
投球論 | 講談社現代新書 |
著者 | 出版年 |
川口和久 | 1999 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
広島カープから読売ジャイアンツへと18年間プロ野球でピッチャーとして第一線にあり続けた著者の,半ば自伝的な「投球論」である。1996年のシーズン終盤で煮え湯を飲まされたドラゴンズファンとしては実に嫌なピッチャーだったのだが,三振がとれるピッチングという著者の美学はわかったし,その意味では負けても仕方ないか,と諦められる相手だった。本書も,ストレートに自分の経験を語り,「タテ」で勝負できるピッチャーこそがプロなのだという内なる思いを吐露した作品である。決して洗練された語りではないが,その美学にかける思いの強さは伝わってくる。
「論」というほど理論として体系化されたものには見えないが,いくつかの定石のようなものは見えた。草野球のピッチャーが読んでも役に立つ実用書的な価値もあると思う。
本書で著者はまず,ピッチャーを2つのタイプにわけ,ヨコで勝負するタイプとしてコントロールの良さが身上の北別府投手が典型的な例だと説明し,自分はタテで勝負するタイプだ,という。たしかにそうかもしれないと納得できる説明である。
著者は,タテで勝負する自分が,どのように落合,バース,駒田といった名選手と対決してきたか,プロの投手とはどういうものか,広島と読売のチームカラーの違い,といったものを経験に基づいて語りながら,現在の解説者としての目から,高橋と勝負するならどうするかといった辺りまで触れている。著者のいう責め方が正しいという保証はないが,ともかく自分を信じて投げないと投手という商売はやっていられないのだな,ということはわかった。その意味では,「投球論」というよりも「投手論」というべきかもしれない。
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
しまった。上記コメント中には誤変換があった。もちろん,「責め方」でなくて,「攻め方」である。