最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
首都は名古屋で決まりだぎゃあ | 講談社文庫 |
著者 | 出版年 |
中澤天童 | 1999 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
国土庁が担当して推進されている首都機能移転談義だが,ここまで進んでいるとは,恥ずかしながら知らなかった。今秋には候補地を絞る段階にまできているらしい。本書には,首都機能移転(遷都)の候補地として有力視されている,東北・那須,名古屋・東濃,鈴鹿あたりの「畿央高原」についての,多くのアンケートデータとともに,なぜ著者は東濃地区を推すのか,東濃地区が首都になった場合に何が起こるのかということが述べられている。多少想像力が逞しすぎる点もあるし,3地区の対決に関しての論点の絞り方が甘い面もあるが(「架空対決」としての討論会の描写にしても,今ひとつ盛り上がりに欠ける),データを通観するだけでも面白いと思う。ただ,データといっても意識調査が中心なので,具体的な人口への影響とか経済効果とか環境影響評価といった値はあまり出てこないのは欠点である。その辺り,各候補地がWEBサイトを立ち上げて運動中なので,それらを見るとよいだろう。著者は「名古屋で決まりだぎゃあ」というが,こと首都機能移転に関する主張としては,本書の東濃論よりも,畿央高原派WEBサイトの方が説得力がある。東濃論としても,岐阜県のページの方が真剣である。本書の論点は,首都機能移転にももちろんあるのだが,同時に名古屋への愛を語ることが主であるようだ。
国土庁の首都機能移転ページ:http://www.nla.go.jp/daishu/index.htm
東北・那須:http://www.pref.fukushima.jp/syuto/index.htm
名古屋・東濃:http://www.pref.aichi.jp/kikaku/SHIRYO/PROJECT/SYUTO/
畿央高原:http://www.toxsoft.com/kio/名古屋への愛,を如実に表現しているのは,例えばp.206-207の,FAで来たイチローが感極まって涙を流しながら,谷沢監督のもと読売巨人に勝ってV10を達成するドラゴンズの未来予想図(この辺り,名古屋人のプロ野球観が窺われて面白い。今年も日本一にはなれなかったけれど,読売巨人をうち負かしてリーグ優勝したので概ね満足なのである。生粋の東京人でありながらドラゴンズファンであるぼくからすると,実力を出し切れずに王ダイエーに負けてしまったのは残念だが)や,コーヒーを頼むと必ず何かつまみがついてくる喫茶店文化が全国に広まるという予想,である。小学校の頃からノイズに耐えながらミッドナイト東海を聴いて育ったぼくとしても,名古屋や名古屋弁は好きなので,本書の著者の気持ちもわかるのである。