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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『ふたりっ子(上・下)』

書名出版社
ふたりっ子(上・下)文春文庫
著者出版年
大石静(原作)・葉月陽子(ノベライズ)1999(単行書は1996-97年)



Oct 31 (sun), 1999, 17:38

中澤 <kashiwa1b-13.teleway.ne.jp> website

三倉茉奈(本書巻末の配役一覧には芙奈となっているが,それじゃフナだって。ひどい誤植だ),佳奈姉妹がデビューしたNHKの朝のテレビ小説のノベライズである。もっとも,ノベライズといっても完全に小説化したわけではなく,ト書きの部分とドラマ部分で文体を変えていたりして,原作にないシーンを想像して補うようなことはされていない(と思う)。実は放映途中で渡米してしまったので途中からストーリーを知らないのだが,知っている部分はテレビと同じだったので,たぶんそうだろう。

双子でありながらまったく性格も才能も違う姉妹が,さまざまな人生の試練を経て,紆余曲折しながら,2人ともそれなりの幸せをつかむという話である。作者が一番いいたかったことは,下巻も終わりの方になって,マサという登場人物の口を借りて言わせている,「幸せの形は,一つやあらへんねん。いろんな幸せがあるし,いろんな生き方があんねん。真実も玲実も,自分の人生は,これから自分で決めていかなあかんねんで」だと思う。新しい夫婦の形というのも第二テーマであったと思うが,やや中途半端な形になっているのは,作者自身結論が出せていないのであろう。しかし,多様性を認めようという主張は第一テーマとも共通しており,それなりに納得できる。双子を描きながら多様性をテーマにもってくるというのは,意外ではあるが,コントラストを際だたせるのに役立っており,手法として成功している。作者の設定の勝利と思う(以下,ネタバレのため改行)。

しかし,こうして通読してみると,海東荘平はつくづく気の毒である。別荘で麗子がほぼ靡いたと思った瞬間,マサが頑張って逆転勝利されてしまっては,立ち直れないよなあ。テレビでそのシーンを見たかったなあ。あと,森山さんの格好良さ。香子を口説くシーンでのせりふなど,凄いと思う。

●税別648円(上),648円(下),ISBN 4-16-751205-X(Amazon | honto)(上),4-16-751206-8(下)


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