最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
ふたりっ子(上・下) | 文春文庫 |
著者 | 出版年 |
大石静(原作)・葉月陽子(ノベライズ) | 1999(単行書は1996-97年) |
中澤 <kashiwa1b-13.teleway.ne.jp> website
三倉茉奈(本書巻末の配役一覧には芙奈となっているが,それじゃフナだって。ひどい誤植だ),佳奈姉妹がデビューしたNHKの朝のテレビ小説のノベライズである。もっとも,ノベライズといっても完全に小説化したわけではなく,ト書きの部分とドラマ部分で文体を変えていたりして,原作にないシーンを想像して補うようなことはされていない(と思う)。実は放映途中で渡米してしまったので途中からストーリーを知らないのだが,知っている部分はテレビと同じだったので,たぶんそうだろう。
双子でありながらまったく性格も才能も違う姉妹が,さまざまな人生の試練を経て,紆余曲折しながら,2人ともそれなりの幸せをつかむという話である。作者が一番いいたかったことは,下巻も終わりの方になって,マサという登場人物の口を借りて言わせている,「幸せの形は,一つやあらへんねん。いろんな幸せがあるし,いろんな生き方があんねん。真実も玲実も,自分の人生は,これから自分で決めていかなあかんねんで」だと思う。新しい夫婦の形というのも第二テーマであったと思うが,やや中途半端な形になっているのは,作者自身結論が出せていないのであろう。しかし,多様性を認めようという主張は第一テーマとも共通しており,それなりに納得できる。双子を描きながら多様性をテーマにもってくるというのは,意外ではあるが,コントラストを際だたせるのに役立っており,手法として成功している。作者の設定の勝利と思う(以下,ネタバレのため改行)。
しかし,こうして通読してみると,海東荘平はつくづく気の毒である。別荘で麗子がほぼ靡いたと思った瞬間,マサが頑張って逆転勝利されてしまっては,立ち直れないよなあ。テレビでそのシーンを見たかったなあ。あと,森山さんの格好良さ。香子を口説くシーンでのせりふなど,凄いと思う。
●税別648円(上),648円(下),ISBN 4-16-751205-X(Amazon | honto)(上),4-16-751206-8(下)