最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
がんを生きる・ミュージシャンの孤独な闘い | 幻冬社文庫 |
著者 | 出版年 |
池田貴 | 1999(単行書は1997) |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
イカすバンド天国(「イカ天」)時代に一世を風靡した,赤の集団「リモート」のリードボーカルだった池田貴族さんが,1996年に33歳の若さで肝細胞癌に侵されていることに気づいてからの闘病の様子を,本名の池田貴で自ら語ったものである。実話だけがもつ迫力がある。リモートといえばNever beという曲がいまだに頭に残っているほど,当時「リモート現象」と相原勇が連呼するほど盛り上がっていたリモートであるが,その後解散していたとは知らなかった。
癌だとわかってからの客観的事実の記載ができているのが凄いと思う。主観的認識をも一段引いて鳥瞰してみせる,この余裕はどこからくるのだろうか。貴族さんは余裕とは思っていないかもしれないが,普通の人にはできないことと思う。彼が生き続けることは,ある意味では,がんと闘う全ての人にとっての希望となる。そのことに自覚的である点が,一時期の彼にカリスマ性を与えたクールさと通底すると思われる。
副題には異論がある。決して「孤独」ではなかったと思うのだが。奥さんや友人である医師の西尾さんの存在は大きいだろう。もっとも,タイトルはご本人がつけたかどうかわからないが。
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
先刻HOSHINO☆EXPRESSを見たら,亡くなられたそうである。まだ若かったのに,さぞ無念であっただろう。合掌。