最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
邪眼鳥 | 新潮文庫 |
著者 | 出版年 |
筒井康隆 | 1999(単行書は1997年) |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
表題作は一意的な理解を拒む構成になっている。頻繁な場面転換と,道中付けのような長回しのせりふが相俟って,前衛系の劇団の作品を小劇場で観ているような気分になった。読者次第で幾通りもの解釈ができ,さまざまなメタファを読みとることが可能である。しかし,こういう作品はあまりぼくは好きではない。
カップリングされている「RPG試案--夫婦遍歴」は,どう考えても島田荘司のある作品を意識して書かれていると思うが,徐々に異世界へと引きずり込まれ,最後は,「コケケケカケコケカケ」が4行続く笑い落ちである。いずれにせよ,作者が何を訴えたいのかといえば現実の不確実さだろうという以上のことは何もわからない。
筒井康隆ファンはこういうのが好きなのだろうけれど,「虚航船団」を途中で放り出してしまったぼくには読みこなせなかったというべきであろう。