最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
古人骨は語る:骨考古学ことはじめ | 角川ソフィア文庫 |
著者 | 出版年 |
片山一道 | 1999(ハードカバーは1990年,同朋舎) |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
こんなに素晴らしい内容の本が,たったの600円で読めるとは,角川ソフィア文庫の英断に拍手を送りたい。とくに,古病理学と古人口学に関する後半部分は,先史時代の人々に対する偏見をうち砕き,素直に眺める視点を提供してくれる貴重なものである。なお,梅毒の話も出てくるが,「コロンブスが持ち帰った病気」ほど詳しくはないので,あちらで補完するとよい。
『読みやすいし面白い。ギデオン・オリヴァー的な謎解きの種明かしというか,方法論の「ことはじめ」なので,実例や片山さん自身の大胆な仮説で彩られた「ポリネシア人」や,片山さんの経験や人生哲学が語られる「ポリネシア 海と空のはざまで」や「考える足」に比べると題材としては不利なのだが,そこは片山さん一流の話術と情熱で面白く読ませてしまうのが凄い。もっとも,ほぼ10年前に出た本だから,最新の知見は入っていないのだが,それも「ことはじめ」としては適当なのかもしれない。』とWEB日記にも書いたが,広く一読をお薦めしたい本である。
敢えて難点をいうならば,骨の見方そのものは比較的さらっと流されていることだ。実物なしに解説するのは難しいだろうから,立体模型を付録に付けるとか,ヴァーチャルリアリティ体験のできるWEBサイトとかとともに,具体的な見方を実習できるような環境があれば,もっと深い楽しみ方ができると思うのだが,無い物ねだりか?
はぎはら <humeco4.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
古人骨を観察すると性や大まかな年齢、さらにはその人の栄養状態や死因までわかるそうである。まさしくタイトルの通り「個人骨は語る」のであった。
また、加齢とともに骨に現れる現象について言及している章では意識的に姿勢を正そうとしていたり、変に腰が気になったり、著者の語り口のうまさによるものだろう。
しかしもう少しつっこんだ話があるともっとおもしろいのに、とも思ってしまうがそれはこの本の目的ではないのだろうからこれでいいのかもしれない。
私が死んで骨になり、その骨を見て将来の人類学者は「こいつは右腕の肘の部分を骨折した」とか「腰や膝に著しい負荷のかかる運動をしていた」とか推定するのだろうか。