最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
がんを生きる2 愛娘・美夕の誕生 | 幻冬社文庫 |
著者 | 出版年 |
池田貴 | 2000(単行書は1998) |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
著者は,闘病の果て,1999年12月25日に亡くなってしまった。
前著で綴られた肝細胞ガン手術後,いろいろな意味での心境の変化があって子どもが欲しいと思い,妊娠してからではあるが一美さんを入籍し,さあこれから,という時にガンの再発が見つかり,著者は絶望の淵に立たされる。本書は,それから娘さんが生まれるまでの間,再手術を受け,抗がん剤の投与を受け,「ガンを克服した」という論調の前著の発売が近かったために再発を隠しながら仕事をし,しかし自分を含めて周囲の状況がどう変化していきどう対応したかという事実を鳥瞰的に眺めながら綴った闘病記である。前著もそうだが,主観的心情だけでなく,事実が積み重ねられていくところに,著者の精神的なタフさがうかがえる。さすが,リモート現象を巻き起こしたカリスマ池田貴族である。
厳密に言えば,施術後半年で新たなガンが見つかるというのは再発ではなく,細胞レベルのガンが成長してしまったのだという。それゆえ,著者は旧友西尾医師から,「今回の四つは切れるだろう。でも,おまえの肝臓はすでにガンが広がっている状態にある。そして,再発のペースが早い。つまり,術後放っておいたら,またすぐに再発する可能性が高いということだ。だから,細胞レベルの時に叩いておこうということで,抗ガン剤を使用するという方針らしい。おそらく,術後に抗ガン剤を一発打って,しばらく様子を見るっていうやり方だと思う」と告げられ,ショックを受ける。一美さんと一緒に,この不幸と闘っていく様子に感動する。妻が自分の子どもを妊娠しているという事実が,初発時よりも彼の心を強くしたのではないだろうか。
本書の終わり方からは,こんなにも早く亡くなってしまったとは,とても信じられない。再手術はうまくいったのだし,抗ガン剤投与もきちんとしているのだ。それだけ肝細胞ガンが恐ろしい病気だということだろう。