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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『バトル・ロワイアル』

書名出版社
バトル・ロワイアル太田出版
著者出版年
高見広春



Apr 18 (tue), 2000, 14:43

KAZU <intpro.hbi.ne.jp> website

凄い人が出てきた。今はまだ「バトル・ロワイアル」しか出版されていないのだが、これが半端じゃなく凄いのだ。少なくとも私的にはここ数年の「はまり度」ナンバー1かもしれない。文学的に素晴らしいとか、表現が美しいとか、そうゆうこととは全く無縁にさえ思えるのだが、とにかく読み出したら止まらない、そうゆう勢いのある作品なのだ。
中学生42人皆殺し!?
デス・ゲーム文学の誕生

某小説新人賞選考委員全員から、あまりの内容の過激さゆえ、
揃いに揃って拒絶、落選させられた噂の問題作、ついに登場。
管理国家と〈死のゲーム〉を主題に、
史上最悪の“椅子取りゲーム”が始まった!!

もう、この帯からしてただものじゃないだろうといった感じで、ただでさえ気になっていたところ、友人が勧めてくださるのだ。さらにネットで検索してみれば、いかに面 白いかを語った書評がどんどん出てくる。

これはもう読むしかないんじゃないか?人から借りていた本を読み終わるとさっそく購入してみた。
新書判でまるで外国の小説のような装丁。どこか安っぽくも感じるそのデザインがいかにも「らしい」といった感じである。
はっきり言って結構分厚い。そのうえ、先記した帯の文章である。これだけで抵抗感じて読まない人が多いに違い無い。私だって恐そうで手が出なかったのだ。

そう、恐い本だと思っていたのだ。なにせ、帯に書いてある「某小説新人賞」とは、ホラー系の賞だったらしいし。

それでも、読みはじめる。

まず思ったのは文章が非常に読みやすいと言うこと。高尚な表現は全く使われておらず、まるで、ライトノベルを読んでいるかのような読みやすさだ。そして、結構軽い。ノリが軽すぎる。こんなんでいいのか?つっこみたくなるほどだ。しかし、そんなことを感じながらもオープニング、修学旅行の出発で活き活きしている中学生達の姿を描写 しつつ、クラス全員の人柄から友人関係まで一気に語りあげる。バスに乗っている、それだけなのに、手にとるようにクラス構成がつかめてしまった。また、このクラスメイトがそれぞれ個性的で魅力的で、でも、「いるいる、こうゆうの」と、妙に納得してしまうような少年少女ばっかりなのだ。まるで楽しい少女小説でも始まりそうな修学旅行風景。が、気がつけば、彼等は皆眠りの中に入っていた。

そして・・・教室だった。しかし、いつも自分達がいる教室とは違うようだ。それ以前に自分達は修学旅行に行っているはずなんじゃないか?彼等は不安を胸に、戸惑いながらも、次々に目覚めた。目の前には知らない大人が居る。担任ではない「はいはいはい、それじゃ説明しまーす。まず、私が、新しい皆さんの担任です。サカモトキンパツといいます」坂持金発・・・先生・・・はそう言うのだ。教室がざわつく。「はいはいはい静かにしなさーい」そして続ける。「じゃ説明しまーす。みんなにここに来てもらったのはほかでもありませーん」
「今日は、皆さんにちょっと、殺し合いをしてもらいまーす」

「皆さんは、今年の"プログラム" 対象クラスに選ばれました。」
おいおいおい、軽く言うなよ、そんなこと。と、読んでる私は思う訳だが、そんな信じられないことをこの『先生』は言い出すのだ。といっても、この世界では誰もが知っていることなのだった。つまり、彼にとって信じられなかったのは、「殺し合いをさせられる」ことではなく、「"プログラム" に選ばれてしまったこと」なのである。

この小説の舞台は「成功したファシズム」の独裁国家「大東亜共和国」。一応は日本みたいなんだけど、パラレルワールド的なものだと考えれば良いのだろうか。はっきり言ってかなり狂ってる。
そして、毎年全国から50クラスが選ばれ、「プログラム」 というものに参加させられる、強制的にだ。クラスメイトがそれぞれ1人になるまで、戦わせるのだ。政府の役人の子供だろうが何だろうが関係ない、全員の首には逃げられないように政府によって作られた首輪がついている。逃げようとすれば爆発する仕掛けだ。そして、24時間誰も死ななくても爆発する。時間区切りで禁止エリアがふえていくので、どこかに留まって隠れていることすらできない。政府は巧妙に「殺し合わざる得ない」状況をつくりだしている。

そして、彼等はひとりひとりディバックを持ち時間を開けて校舎から出ていく。ディバックの中身は、地図や方位 磁石、ちょっとした食料。
そして、武器だ。
武器は人により様々なものがある。もちろん、体力に応じてなんてことはなく、これも全く運の問題なのだ。どんな武器があるかはちょっとネタバレになってしまうので言えないのだが。

さて、殺さなくては殺されてしまう。

そんな状況に追い込まれた彼等。それも、敵はクラスメイト達だ。

そうして、ゲームは始まった。


人を信じて助け合う者、誰も信じられず逃げまどう者、物陰にひたすら隠れ続ける者、心中する者、脱出しようとする者、そして、「やる気」になるもの。
「殺し合い」という異常な状況の中で、だからこそ、人間性が浮き彫りにされていく。愛情、友情、信頼、裏切り・・・「中学生3年」という思春期まっただ中だからこそ、繊細で、まっすぐで、でも、弱くて、もろい。

そして、当然殺伐シーンや、アクションシーンなども沢山出てくるのだが、これがまた、凄いのだ、どうってうまく説明できないけど。

段落で『残り○人』と、しっかり、出ているあたりはちょっと恐い。

しかし、この42人が次々死んでいくなか「いつのまにか死んでました」な人はいないのだ。皆誰にどのように殺されたか(もしくは死んだか)が、それに関するドラマと共にしっかり描き出されている。

ただの、殺人ゲームではなく、この「人間性」に重きをおいたことで、この物語は格段に面 白くなっている。凄くひどい話で、本当だったら恐くて読めないような状況下にあって、それでも、読みながら私が感じていたのは、恐怖ではなく、悲しみ、せつなさ、時には笑えさえした。そして、泣けた。

最後の最後まで予測がつかない。どうなるんだ?止まれない。

結局かなりの厚さの本であるのに、読み終わるのに2日とかからなかった。それだけ勢いがあったのだろう。

そして、誰もが考えるのだ。

・・・もし、私だったら?

あー。そんなこと考えたくも無い。


Apr 24 (mon), 2000, 14:57

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

KAZUさん,いらっしゃいませ。実は既に「バトル・ロワイヤル」は登録してあった(下記リンク)ので,そちらに追加していただいても良かったのですが,新規でも構いません。「読みやすい文章」という指摘はなるほどと思いました。たしかにこの本が多くの読者から支持を受けたのは,文章の読みやすさ(ポップさといってもよい)が大きなファクターとなっている気がします。
http://minato.sip21c.org/bookreview/oldreviews/19991005211111.html

掲示板オーナーとしては,最近多忙でここに書くのはさぼっているので,新しい本を紹介していただけると,とても嬉しいです。では。


Jun 22 (sun), 2003, 17:54

なかしま <n194230.ap.plala.or.jp>

『バトル・ロワイアル』は、以前から何度も読んでいたが、今回『バトル・ロワイアル2―鎮魂歌―』が公開されると聞いたので、久々に本棚から引っ張り出し、読み始めた。

今読んでも、全然色褪せていないし、独自の世界観を確定していて、読み応えは郡を抜いている(この数年の間に何度か類似書の『リアル鬼ごっこ』や『そして粛清の扉を』などが刊行されたが、やはり本作ほどの衝撃度は感じられなかった)。

古い本で似たようなテーマで描いたものならスティーブン・キングの『死のロングウォーク』やジョージ・ウォーエルの『カタロニア賛歌』(ただしこれはあまり殺戮描写はない)や、ゴールディングの『蝿の王』だろう。漫画なら、楳図かずおの『漂流教室』や『あずみ』(1巻の仲間同士の殺し合いシーン)だろう。

だが、やはりどの作品も、この『バトル・ロワイアル』には太刀打ちできそうもない。

それは、この『バトル・ロワイアル』が、青春小説にもスプラッタ小説にも、ホラー小説にもなり得るからであろう。

ぜひ、十代に読んでもらいたい作品である。

追記:一年ほど前に幻冬社文庫より上下巻で発売された。


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