最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
毒草を食べてみた | 文春新書 |
著者 | 出版年 |
植松 黎 | 2000年 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
ドクウツギ,バイケイソウ,キョウチクトウ,トリカブト,フクジュソウ,キナ,バッカク,シキミ,ドクゼリ,アサ,スイトピー,ヒガンバナ,スズラン,タバコ,コカ,ジギタリス,イヌサフラン,インドジャボク,クラーレノキ,マチン,ストロファンツス,イラクサ,ケシ,クサノオウ,スイセン,オトギリソウ,アセビ,マンドレーク,ヒヨス,ベラドンナ,アイリス,イチイ,ポインセチア,クリスマスローズ,ビンロウ,マオウ,トウワタ,チョウセンアサガオ,ペヨーテ,ドクニンジン,ニガヨモギ,エゴノキ,ミトラガイナ,ゲルセミウム・エレガンスという44の毒草(エゴノキみたいな木本を毒草と呼ぶのには抵抗があるし,バッカクは植物でさえないけれど)について,その性質についての科学的概説とともに,人類がこれらの毒草とどのようにつきあってきたのかを窺わせる歴史的エピソードをちりばめ,いくつかの毒草については実際に口に入れてみた体験談まで書かれている,興味深い本であった。玉石混交ではあるけれど,一読して損はないと思う。
上述のように本書では,トリカブトのように毒草としてよく知られているものもあれば,ミトラガイナみたいにきいたこともないようなものも扱われている。イチイの赤い軟らかい部分は,子どもたちが摘んで食べていたのだが,それ以外の部分は猛毒だということは知らなかったので,ぞっとした。先日摘んだセリもドクゼリではないかと気になってしまったのは本書の効用であり,山野の動植物を取ってきて食べることをする人は必読と思った。
もっとも,出典が明記されていない引用や伝聞は,浅いような気がする。たとえば,p.35のキナの写真についているキャプションは大嘘だし,チャールズ・レジャーに触れたところでマヌエル・インクラ・マクラミのことを書いていないのは手落ちと思うし,「ハマダラカはまもなくクロロキンに耐性のある遺伝子に組みかえ,新薬が出るたびに耐性株をつくりあげてしまった」は主語述語関係すら怪しく,まったく意味不明である。クロロキン耐性株はハマダラカではなくてマラリア原虫に存在するという基本すら押さえていないのでは致命的と思う。
それに比べて,体験に基づく部分はすばらしい。たとえば,p.64-65の,ヒガンバナの球根から作ったヘソビ餅を「私たちは黙って食べた」に至るくだりなど絶品である。そういうバイアスを掛けて読むべき本である。
eri <ip1b0217.kng.mesh.ad.jp>
学術書ではないので、さらっと読める割にはためになった。