最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
青の炎 | 角川書店 |
著者 | 出版年 |
貴志祐介 |
KAZU <intpro.hbi.ne.jp> website
こんなにもせつない殺人者がかつていただろうか。光と風を浴びて、17歳の少年は、海沿いの道を駆け抜ける。愛する妹と母のために-。氷のように冷たい殺意を抱いて。
人間の尊厳とは何か?愛とは、正義とは、家族の絆とは・・・。熱き感動を呼ぶ、現代日本の「罪と罰」。日本ミステリー史上、燦然と輝く永遠の名作。
青を基調とした装丁にやはり青いに帯が巻いてある。そこに、上にあるようなコピーが書かれている。 このコピーを書店で観たとき、もうすでに「自分はこれを読むだろう」そんな決意じみたものを感じた。その時点では別の本を読んでいたと言うこともあり実際に読んだのは一昨日、昨日の2日間になるのだが。
名作である。
17歳の高校生秀一は成績優秀、部活にも所属し、学校では友人達と軽口を叩き、女の子との恋の駆け引きも楽しんでいる。しかし、彼の家庭には寄生虫、曾根がいたのだ。秀一の愛する家族、母と妹。2人とのささやかな幸せを踏みつぶす曽根を家から去らせるためにあらゆる方法を考える秀一だったのだが、しかし、どの方法も通用しないのだと思ったとき、彼はかねてから想像のなかで何度もシミュレーションをしていた「強制終了」への計画を実行に移すことにするのだった。
妹と母親、愛する2人を守るため、そして、曽根への憎しみという青の炎を燃やしながら。とにかくせつない。最後に至るにつれて、家族、友人、恋人の優しさ、そして、彼らへの秀一の優しさが、秀一にある決断をさせるのだが、そのくだりに胸が締め付けられる。
物語の大半は緻密な「殺人計画」と、その実行に費やされているのだが、そんな「青の炎」を燃やしながらも日頃とまるで変わらない生活を営んでいく秀一。それは、勉強、友情、恋、部活動。と、高校生ならあたりまえのもので溢れている。彼にとっての「計画」の成功とはこれらの日常を変わらずこなしてこそ成功を意味するものであって、それさえも計画の一部であるのだったが、最後に至るにつれて、近しい者達はそんな秀一の姿を見守っているからこそ、どこかで彼の異変に気づいている、それでも愛しているのだ。そして、彼も何よりもその日常を愛し、しかし、すでに秀一は闇の中へと踏み出してしまい、もう戻ることはできないのだ。最近10代の少年による犯罪がテレビなどでも取りざたされ、この作品をコピーした事件などもあったようなのだが、秀一と彼らが決定的に違うと思われるのは、「愛する者を守るため」の最終的な手段であったということだ。少なくとも本人にとっては。そこには「愉快犯」的なものは存在しない(といっても、成功に対する興奮というものは避けられないようだが)。つまり人を愛するというその気持ちが無ければおそらく、このような手段には至らないだろうと思われる。他に選択肢が本当に無かったのか?と、いえば、無いはずはないだろうし、曽根が死ぬほどの人間だったのかといえばそれもそうとは言い切れない。秀一は17歳という若さであったからこそ、愛も、憎しみも、早く進行してしまったのではないだろうか?
ミステリー、クライムサスペンス、そして、青春小説。
あらゆる要素を組み込みながら、最後は、ただただせつない。どこか、「あの頃」の自分に重ねながら一気に読んでしまった。
玉川 彰吾 <msu0121.msubr1.thn.ne.jp>
僕がこの本を、読んだのは、まだ、高校一年の時だった。(今、高校三年生)
1999年に本書が出た時から少しずつ気になっていた。
主人公が自分と同年代の高校生で、同じように家族を思い、また、友人たちとの関係を大切にしている所に共感してしまった。
今、この物語の主人公と同じ17歳になることで、さらに、主人公の気持ちが分かるようになった気がする。
今の僕に殺したい人間などもちろんいないけれども、もしかしたら、同じように、誰かを憎むことが、この人生の中で起きるかも知れない。
人は常に誰かを愛し、大切に思う一方、また、同じように誰かを憎んでいる。そんなことを、この『青の炎』は、僕に教えてくれた気がする。だからこそ、いろんな人に読んでほしい作品でもある。
主人公、櫛森秀一の殺人を通して、人間の命の重さというものを感じることができた。人の命の重さが少しずつ忘れられようとしている世の中で、この物語は、とても貴重な存在である気がする。
もし、ドラマ化するのであれば、ただのサスペンスもので、終らせてほしくない。やはり、主人公の切ない思い、家族の絆、などを、重く書いてほしい。個人的な希望では、やはり、サスペンスものを書く人よりも、青春のもや学園ものを書く人に脚本を書いてほしいと思う。
2002年1月14日
読者
じゅんじゅん <j155251.ap.plala.or.jp>
貴志さんの作品は以前「黒い家」を読んでおもしろかったので「青の炎」も期待して読みました。
一言で言い表すと「せつない」うまく書評はできませんが、秀一が家族を守りたい一心で殺人を犯してしまう心情は涙なくしては読めませんでした。殺人事件が毎日のように報道されている今、こういう話はとても心に沁みました。自分も愛する人の為に殺人を犯しかねない、誰にでもあり得るのではないか?とも感じました。こういうと語弊があるかもしれませんが、「殺人」なのに読後が「爽やか」なんですよね。ただ、義父を殺すまでの心理描写がもう少し欲しかったかも。最初から殺意を抱いていたように思えたので・・。
映画化されると原作よりおもしろくないものが多いので、原作に近い作品であることを期待しています。
ゆーこ <eatcf-223p143.ppp15.odn.ne.jp>
私はただなんとなく「青の炎」を買い、読んではまってしまいました。この本はただのミステリーじゃない!名作だと思いました。情景、風、秀一の気持ち等の描写がすごくきれいで、じゅんじゅんさんの言うとおり、読後がすごく爽やかでした。
ただ一つ不満があります。それは映画の「青の炎」です。私が原作から読み取った秀一と、映画の秀一は別人とまではいかないもののそれに近いものがありました。結局ただのサスペンスで終わったような気がします。
なかしま <m146125.ap.plala.or.jp>
映画の『青の炎』を鑑賞したが、ある意味、少しホッとしている。
小説の『青の炎』には櫛森秀一と○○の性描写があるため「二ノ宮と松浦て゛これやるのか・・・!?」と思ってしまったが、映画にはその場面がなかったので良かった(当たり前か)。
さて、小説はというと、所謂(いわゆる)「倒叙推理小説」というものらしく、絶対に犯人は完全犯罪を行えない、という。
曾根の暴れっぷりや、生徒同士の会話、魅力ある登場人物で、娯楽性には富んでいる。
15歳ぐらいの青年が読むと、とても感動するのではないか。中1には少し分かりづらいかもしれないが。
面白含有量の作品である。
ふりかけ <dns.city.yanagawa.fukuoka.jp>
僕は、この本を2日で読み終えてしまいました。
まだ僕は、12歳なのですがこんな本をたくさんもってます。読み終わった後、泣いてしまいました・・・・。