最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
わが家の新築奮闘記 | 晶文社 |
著者 | 出版年 |
池内了 | 1999年 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
宇宙物理学者にして名コラムニストとしても有名な池内さんが,自宅を新築しようと思ったきっかけから,環境にやさしくとかバリアフリーとかいったことを考えながら,大工さんや設計士さんと人間的な交流を重ね,「家」というものが完成するまでを綴ったノンフィクション(個人名もすべて実名である)。文章そのものも面白いし,考え方や行動に関する何気ない思索にもウィットが感じられて,一気に読んでしまったし,家をもちたくなってしまった(まだ無理だが)。以下,書評というよりは感想文。
新築のきっかけは,新聞のコラムで1997年5月に「核燃サイクル構想の終焉」という記事を書いて,原発を批判し,「太陽電池パネルをわが家の屋根に取り付けることに決めて,各社のパンフレットを取り寄せている」と宣言してしまったことだそうだ。反響が大きかったことから後に引けなくなってしまい,太陽電池パネルを取り付けようと家の診断をしたら10年しかもたないといわれたために,10年後に自分に残っているエネルギーを考えて,いっそ新築,となったとのこと。高度成長期にできた安普請の建売住宅に住んでいる人は多いはずだから,こういう事態に直面している人も少なくないと思う。そうなって悩んでいるすべての人に,まずこの本を読んで欲しいと思う。
本書でもっとも共感したのは,LCA的な発想が生活の中に実践されている点である。たとえば,太陽光発電がプラスかマイナスかということを池内さんはまず検討するわけだが,一般に考慮される金銭的な損得勘定では,故障なしで25年動いて初めてペイすると言った後で,この損得勘定には物価変動が考慮されていないことや,現在の発電所から電力を買う費用には廃棄物処理が加味されていないことを指摘し,電気代ベースでなく,太陽光パネル製作のために投入したエネルギーとパネルが壊れるまでに太陽光発電によって取り出せるエネルギーの大小を比較すべきであるといって,Energy Pay-back Timeをあげている。長めにみても(パネルのシリコン結晶方式によって違うらしい)10年もてばプラスというデータには目を開かされた。
同様に考えて,二酸化炭素ペイバックタイム(パネル製造が火力発電で供給されたエネルギーを使っていた場合の発生二酸化炭素量と,それは火力発電所で排出される二酸化炭素量の何年分であるか)を考慮すると,石油火力の6年分に相当するので,おそらく10年はもつであろう太陽電池パネルは「環境にやさしい」といってよいし,だから導入するのだ,という論旨は明快である。
ちなみに,太陽光発電にせよ,風力発電にせよ,これまではこうした先駆的個人の努力によって発展してきたわけだが,循環型社会基本法の成立にともなって公共事業としての電力行政も転換され始めている。池内さんも喜んでいることであろう。
なお,「天文学者の虫眼鏡」と違って,思い入れが大きいためか,筆が走りすぎて若干意味がとりにくい点も散見された。たとえば,上述二酸化炭素ペイバックタイムについて,本文では「火力発電所で排出される二酸化炭素量の何年分であるか」と書かれているが,おそらく,「太陽光発電をしなかった場合の消費電力を火力発電からまかなった場合に発生するはずの二酸化炭素量の何年分に相当するか」という意味であろう。
機会があったら,池内さんと話をしてみたいものである。
ひらの <cbcba-127p94.ppp13.odn.ad.jp> website
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