最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
ピニェルの振り子 | ソノラマ文庫 |
著者 | 出版年 |
野尻抱介 | 2000年 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
bk1(http://www.bk1.co.jp/)でベストセラーになった本。「銀河博物誌」という新しいシリーズで,「プレイヤー」という超越者によって,ある時点で地球上からまとまった人数が宇宙のどこかに移植されたという設定から始まる物語である。
著者あとがきによると,博物学の黄金時代だった19世紀イングランド人が(イングランドから来た民がニューウェールズと命名するというセンスは変な気がするが)他の星系に運ばれて星間航行のテクノロジーを与えられたら何を始めるかという話だそうなので,19世紀イングランドに拘っているようだが,p.46「しかしいつか二十世紀,二十一世紀の地球から来た人々と出会う可能性がないとはいえない」とのことだから,もしかしたらシリーズ後半では現代人も出してくるかもしれない。
例によってメインアイディアは天体物理的思考実験だが,未知との遭遇への期待という博物学的というかスペースオペラのお約束が豊富に描かれているし,子どもが読むときに感情移入できる視点としてのスタンもあまりにお約束っぽいけれどそれらしく描かれているので,エドガー・ライス・バロウズの金星シリーズみたいな意味で,小学生の頃の自分だったら夢中になって読んだだろうと思われる。そういう体験がある読者にとってはある種の懐かしさと気恥ずかしさをもって楽しめるジュブナイルである。ただ,現代の子どもにとってこの種のコードが通用するのかというと,良くわからないが。
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website