最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
13歳の黙示録 | 講談社 |
著者 | 出版年 |
宗田理 | 2000年 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
「ぼくら」シリーズで有名な宗田理の作家活動20周年記念・特別書下ろし作品だそうだ。
さすがにハードカヴァーだけあって,権威主義に凝り固まった愚かな大人を馬鹿にする(という宗田理お得意の手口)だけの本ではない。本書には3つのはっきりした主張がある。取り返しのつかない失敗もあるということと,それでもなお失敗はできるだけフォローの責任をまっとうすべきだということ,物事をよく考えて実行しようということである。同感である。もう一ついえば,不幸は拡大再生産されるので,世の中を良くしようと思ったら他人を不幸にするような行為をしてはいけないということだ。見方を変えれば,他人を不幸にして平気でいる子どもは,世の中をイメージできていないといえる。つまり,地域社会の崩壊は,ここでも不幸の遠因となっている。
問題は,学級崩壊を起こしたり個人的に煮詰まっていたりする小中学生が,本書の厚さの本を手に取るかということだ。本当はその層にこそ読んで欲しいのであろうに,この厚さに込められた濃厚な物語を読みとる能力があるかといえば疑問である。それにしても学級崩壊の描写にはリアリティがある。我が子のことを思うとぞーっとして,きちんと子どもに向き合わねばという気になるので,小中学生の子どもをもつ親にも読んで欲しい物語である。