最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
完全米飯給食が日本を救う | 東洋経済新報社 |
著者 | 出版年 |
井上ひさし,島田彰夫,江部康二,谷口威夫,坂内幸子,幕内秀夫;学校給食と子どもの健康を考える会【編】 | 2000年 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
米あまり現象の解決と子どもの健康という一石二鳥を目指して,学校給食は完全米飯,あるいはそれに近いものにするべきだ,という運動を進める人たちが開いたシンポジウムの報告書。
極論(例えば,p.22「私に小学校一年の子どもがいますが,彼が持って帰る給食の献立表を見ると,ほとんど狂っています。あれは気が狂った人たちの設計で,気が狂った子どもたちが食べる献立です。一つのお盆の中に中華があって,和食があって,本当にめちゃくちゃな組み合わせ」とあるが,毎回めちゃくちゃなわけではないだろう。もちろんその後で,本当に言いたいこと「そこで重要視されているのはカロリー計算とか栄養と,それからどれだけつくりやすいかということだけ」を引き出すための前置きだとはわかるが,敢えてショッキングな表現をして読者の目を引こうという戦略は,ぼくは好かない)や嘘も散見されるが,傾聴すべき意見も多い。確かに,給食を完全に米飯にすれば,コメ余り問題など一瞬で解決するだろうし,食糧自給率も上がるだろう。どうせなら,青空MLで提案したみたいに,学校給食のコメは自給できるように水田を各学区に設置すれば,緑化という視点からもいいし,他人に対して無理に奉仕活動なんかさせなくても,自分が生きるための食べ物を生産するのがどんなに大変なことか実感できるだろうし,無料の労働力を豊富に投入できることで無農薬栽培もできそうだから精米度の低いコメを炊けば栄養面でも味という点でも現在より改善されることが期待される。たしかに日本が救われそうな気がする。本書中もっとも肯ける点が多かったのは幕内さんの章だが,彼が「粗食のすすめ」シリーズでベストセラーを何冊も出しているのは,本書を読むまで知らなかった。
粗食ならいいというものではないと思うが,なるべく原材料に近い形で食べる方がいいというのは,科学的には正しいと思う。文化はどうする? という反論にはどう答えるのか,聞いてみたい気もした。
データも出ているし,熱塩加納村の実践の話を読むと,それだけ内容が違う給食がたった数十円の差で出るのなら是非やって欲しいものだと思う。その程度の金額を節約しないと生きていけないような暮らしもあるのかもしれないが。
読了時に,「きちんと書評を書かねばなるまい」と書いているが,時間がないので延期。