最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
肉食のすすめ | 経済界・リュウブックス |
著者 | 出版年 |
柴田博 | 2000年 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
いろいろな意味で衝撃的な本である。東京都老人研の小金井研究など丁寧なコホート研究では,老人ばかりでなく中高年全部が従来の考え方よりも太っていて血清コレステロールが高めの方が死亡率は低いという結果が出たという話だ。従来の常識というか権威に楯突く内容だから,そう簡単に受け入れられるとは思わないが,この本に出ているデータを信用すれば,その主張には無理がない。問題はデータがどういう状況でとられたかとかいった細かい部分が十分には書かれていないことで,その意味で原著論文をリファレンスとして是非リストして欲しかったと思う。SHIBATA HでPubMed (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/)でも検索するか? と思ったほどである。
それにしても柴田さんという方は,医師免許をもっている方には珍しいタイプだと思う。巻末の締め言葉として,「幸せな人生が目的であって,健康や長寿が目的ではない」と書かれているが,これにはまったく同感である。もっとも,そうすると肥満改善指導なんかできなくなってしまうかもしれないが。中高年の生き方ということについても,「生きがい」というsuccessful agingを包括する概念がもともと日本にはあったことに触れ,高齢化社会は暗くないと論じ,社会参画,とりわけ相互扶助が大事だと指摘しているのは重要な視点と思う。定年退職後の世代に是非読んで欲しい本である。親に送ってみようかなぁ。