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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『人口問題のアポリア』

書名出版社
人口問題のアポリア岩波書店
著者出版年
竹内啓1996



Dec 26 (tue), 2000, 19:53

徒然三十郎 <snjk040k050.ppp.infoweb.ne.jp>

「21世紀問題群ブックス」の⑰です。

著者の主張は、マルサスの『人口論』をもちだして人口問題を単純に語るのは危険である、ということにつきるのですが、問題はそういう語り方が昨今どれだけなされているかということです。1994年の国際人口開発会議の中心概念はマクロな視点とは対極的なリプロダクティブ・ヘルス/ライツだったのですが、本書はこういう国際情勢をふまえないで無人島を攻撃しているように見えます。また、マルサスを批判する重要な立場としては、マルクス主義の他、ボズラップ説もありますが、これについてもふまえられていないように見えます。

「あとがき」にあるように著者は人口問題の専門家ではないので、上記の難点は不可避に近かったかも知れませんが、そういった種類でない難点もあります。ひとつには、図表が本文から独立して章の間にただ飾られていることです。掲載した図表に適宜言及しながら議論を進めるというのが、データが重要視されるテーマでは当然のスタイルでしょう。

僕が読んだのは第1刷ですが、単純ミスも目につきます。例えば、p.35からp.36にまたがる一文では「一八二〇年」、「一七〇〇年」をそれぞれ「一七二〇年」、「一六〇〇年」に直す必要があるようです。また、p.74の注釈は、著者表記、書名、発行年を直して「ドネラ・H・メドウズ他『限界を超えて』ダイヤモンド社、一九九二年」とすべきでしょう。岩波書店の方にもしっかりしていただきたいものです。


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