目次

書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『バーバリー・レーン28番地』

書名出版社
バーバリー・レーン28番地ソニー・マガジンズ
著者出版年
アーミステッド・モーピン2001年1月22日



Jan 26 (fri), 2001, 19:31

たれぞう <c203082.ppp.asahi-net.or.jp>

読んで絶対損しない1冊。
カバーは若い女性向けだが、中身としては読者層は広いと思う。

主人公は、オハイオ州クリーブランド出身、25歳のメリー・アン・シングルトン。
時代は1970年代。
彼女が、生まれて初めてのひとり旅で訪れたサンフランシスコに一目惚れし、サンフランシスコに住むことを決意するシーンから物語ははじまる。

ロシアン・ヒル、バーバリー・レーン28番地にすてきな下宿を見つけ、あこがれのひとり暮らしをはじめた彼女は、サンフランシスコを象徴するような同居人たち(ドラッグを常用している奔放なコピーライターのモナ、毎夜ナンパに精を出すブライアン、パートナーに捨てられてモナのところに転がり込んできたゲイのマイケル、そして庭でマリワナを栽培している謎の女家主のマドリガル夫人)に圧倒されながらも、着実にサンフランシスコに根をおろしてゆく。

一見、人生を謳歌しているようにみえる登場人物それぞれが、実はひそかに哀しい想いを抱え、必死に生きている。それぞれが、誰かの支えを必要としている。何かに頼らなくては生きていけない。物語を読み進むうちに、そんなことも明らかになる。それが、オビに書かれているコピー、『みんな「家族」を求めてる』が表現している、物語の根底にあるテーマだ。

モナはレズビアンの関係にあった恋人ドロシアとの破局の後、ニューヨークからサンフランシスコにやってきた。そして、不動産業で成功している母親との間の確執も抱えている。ブライアンは、かつては反体制派の弁護士だったが燃え尽きてしまった末に、法曹の世界から足をあらい、今はレストランのウエイターをやっている。マイケルは田舎の両親にゲイであることを告白できずにいて、恋愛がうまくいかないことでも悩んでいる。そしてメリー・アンは、初めての恋が会社の会長の娘婿ビーチャムとの不倫で、一時は田舎に戻ろうかとまで思いつめる。みんな「自分の人生、この先どうなってしまうんだろう」「どんな風に生きていったらいいのか......」という漠然とした不安を抱え、不確かさの中で、バーバリー・レーンの「家族」と身を寄せ合いながら、生きているのだ。

登場人物に、自分を重ねあわせながら、ときに笑い、ときにじーんとしながら読める。6巻シリーズと書いてあるので、早く続きが読みたい!

メリー・アンもさることながら、登場人物みんなの今後の人生がどうなるのか、興味津々。久しぶりに、
「みんなに読んでもらいたい!」&「続きが早く読みたい!」と熱く思ってしまったので、初めて書き込みしてみました。


旧書評掲示板保存ファイルトップへ