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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『私が死ぬと茶は廃れる』

書名出版社
私が死ぬと茶は廃れる講談社
著者出版年
三鬼英介2000年10月23日



Feb 10 (sat), 2001, 14:42

関根成元 <ntk122ds05.tk1.mesh.ad.jp> website

この本は「茶のオデッセー」である。作者は茶に関して全くの門外漢だが茶会に参じる煌びやかな和服の群れと利休の茶は同じものであるはずがないとの疑問を持つ。表題の「私が死ぬと茶は廃れる」は利休居士晩年の言葉だ。

「(私の死後)十年ヲ過ギズ、茶ノ本道廃ルベシ。廃ル時、世間ニテハ却ッテ茶ノ湯繁盛ト思フベキ也」開祖の予言に接し、三鬼の疑問は深まる。金津滋。松江市に住む最後の茶人。茶を趣味ではなく生活そのものとする人、七軒所有していた貸家を全て茶道具に変えた男。金津との対話を通じ、三鬼の目に「茶」の姿が見えてくる。歴史の中で

時代の煤や綿埃を幾重にも被っていた茶道をはたきで払い

陽光に曝したような爽快感が読後に残る。三鬼に話を終えた後、金津は急逝する。かの岡倉天心は日本文化のエッセンスである「茶」を外国人に紹介するため英語版「茶の本」を刊行した。三鬼英介は日本文化を忘れてしまった日本人へ、現代版「茶の本」を執筆したのだと思う。


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