最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
拒税同盟 | 日経ビジネス人文庫 |
著者 | 出版年 |
水木楊 | 2001年(単行書は1996年) |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
現在の日本の税金の無駄遣いは目に余るので,税金を払うことを拒否し,その運動を全国展開したら……というシミュレーション小説。1996年に単行書で発表された当初から評判を呼び,現在ではWEBサイト(http://www.webshincho.com/kyozei/frame_shinbun.html)もできているという。今回日経ビジネス人文庫に入るに際して,新しいデータを入れたり省庁名を新しくしたり,と大幅に改稿されている。
確定申告すれば,新幹線定期の通勤費用が通勤手当を大幅に上回る分が必要経費として認められる可能性もないではない,という点に気づいただけでも目からウロコだったし,たしかに民意を反映しているとは到底言い難い行政に対して税の支払いを拒否するというのは面白い視点かもしれないと思った。法律やデータが資料として提示されているので,ある種の教養小説としても楽しめた。新聞やテレビで都が導入しようとして銀行なんかと戦っていたのは知っているけど,外形標準課税って本当はどういうものなんだろう? というような人にお薦めである。
なお,p.5の『「億円」なら「千円」』の部分は,『「億円」なら「円」』の誤植と思われる。まえがき部分なのでストーリーには影響しないが,本書は計算の信頼性がシミュレーション小説としての価値を支えていると思うので,もし版を重ねる売れ行きとなるなら,この誤植は直した方がいいと思う。