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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『暮らしの中の洗浄』

書名出版社
暮らしの中の洗浄地人書館
著者出版年
辻薦1994年



Mar 11 (sun), 2001, 01:30

りりぃ <d2e09116.tcat.ne.jp> website

楽しく読めた。この手の本は、時として単調で飽きてしまい、なかなか読み進まなかったりすることがある。しかし、この方のこの本は、なかなか人を惹きつけるものがある。なぜだろう?農学博士、技術士であると同時に、エッセイや小説も出版されているほどの文筆家との紹介文が裏帯にあった。う~ん、なるほど、それで納得。随分きれいな文だなぁと思ったところがあったし、文体も上手い。文学的なセンスをこの手の本に感じるのは珍しいことだ。p.145の真ん中辺りの、中国の太湖の情景を描いた文章はなかなかだ。


この人の洗剤の話題もさることながら、この本の魅力は、著者が様々な現場で経験してきた地に足をつけた、幅広い経験から確かにくるのだろう。洗剤、石けんの現実の姿を良く捉えている。こういうのが中立なのだろうか?表に出てくる数値で、これは、洗剤サイドよりかなぁ、と思うところもあったが、この著者には、石けんへの愛着があるのがいい。嘗て、作ってもいたようだ。かといって、石けん礼賛でないところがいい。合成洗剤の必要性も因果関係を含めて無理なく説明していれば、決してその環境負荷を説明することも忘れていない。工業用も含めてそれぞれの洗浄剤の利点、欠点を全部ではないにしても、バランス良く述べているのが、爽やかだ。水の浪費への反省を含めて、洗浄の合理的で節度ある使用などについてもしっかり触れ

ている。結局現状を見据えているのだろう。

確かに全て良いものもなければ、全て悪いというものもないはずだ。それが、必要から生まれたもので、ある程度皆から支持を受けているのなら、選ばれているのなら。

ただ、問題は、その商品の情報開示のあり方にあるように思う。どの商品についても、良いところばかり伝えるのでは、アンフェアでないか?

まるで、仲人口というやつではないか?酷い欠点を知っていながら隠すのは良くないだろう。ついでに例えれば、恋愛結婚なら、欠点を告白しても、選ばれる人もいれば、選ぶ人もいる。う~ん、知らされているか、いないかの違いだな。知らされていないと、騙された気になるのだ。

石けん、洗剤問題もこんな感じだ。


さて、本題のこの本の書評にまた戻ろう。こういう灰汁のない、穏やかにすぅっと入ってくるような洗剤関係の本が

疲れた頭にはいいのかもしれない。著者の人柄だろうか。その割りには、大切な環境との問題点もしっかり捉えており、押さえるべきところは押さえていて、ただ優しさだけの本ではないのでぜひ読んで欲しい。


最後に一つ。著者の写真の上衣は、どう見ても・・・。

恐らく自宅の庭でくつろいでいたのだろう。飾らない人間性の表れなのかもしれない。


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