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書評

最終更新:2019年2月13日(水)


旧書評掲示板保存ファイル/書評:『東京湾の環境問題史』

書名出版社
東京湾の環境問題史有斐閣
著者出版年
若林敬子2000年



May 07 (mon), 2001, 12:38

中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website

著者は中国の人口問題の専門家として広く知られているが,農村社会学分野でも長いキャリアのある研究者であり,かつ南房総生まれであることから海の環境保全に関する市民運動の実践も続けてきた経歴が,本書の成立に深く関わっている。

本書は,東京湾に限らず日本における環境保全運動の歴史の一局面を,豊富なデータを引用しながら鮮やかに描き出すことに成功している。

ただし,第4章で高度経済成長期に東京への人口一極集中が進んだという話に触れられているのを除けば,ほとんど人口への言及がないので,「人口学研究」の新刊短評を書くのには苦労した。もちろん干潟の埋め立てが進んだ背景には都市化と人口増加と経済成長があったわけだし,それを踏まえていないわけではないのだが,直接人口問題には焦点を当てていない。

むしろ本書は環境保全運動の生々しい側面に当事者として深く踏み込んでいる点に特徴がある。その分マクロな視点は薄くなっていると思うが,環境保全運動の有名人が次々に登場する濃さは,生々しくて類書の追随を許さない。力の入った良書であり,とくに海の環境問題に関心のある人や,市民運動に関心がある人は必読書と思う。

●税別6000円,ISBN 4-641-07632-4(Amazon | honto


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