最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
インターネット中毒---まじめな警告です | 毎日新聞社 |
著者 | 出版年 |
キンバリー・ヤング | 1998年 |
りりぃ <d2f9b96e.tcat.ne.jp> website
世の中、IT革命ともてはやされているインターネットだが、確かに著者の指摘する“インターネット中毒”というのは、ネットの持つ魔力だと思う。インターネットの普及を急ぐ余り、利点ばかり強調し、その問題点などを指導なり教育なりしていかないと、日本でもこの本に書かれているような深刻な問題が発生するのは時間の問題かもしれない。否、京都メル友殺人などの例や、あれは検事だったろうか?の妻の例などからも、もうそれらは現実に起きていると言えるだろうし、潜在的には多くの類似例を抱えているのだろう。
しかし、チャットから始まったサイバースペースでの情事で夫や妻を捨てて、新しい相手との生活を始めるとか、職場で私用でネットを使いすぎて解雇されるとか、大学生や院生がMUDというゲームにハマって、退学していくとか、人生変えてしまうまでのめり込む、ってことが事例として多数起きているというのが凄いと思う。まさに、どれを優先すべきかの判断を失った中毒状態だろう。離婚については、もともと米国は日本より離婚率が高いはずだから、ネット以外にもそういう国民性とか他の要因も加味しなければならないのだろうが。
“インターネット中毒”というのがあるのは、以前英検のリスニング問題集に話題として出てきていたから知っていたが、誰でも陥る可能性を秘めたものだということや、職業的に使っている人でさえ陥る可能性があることなど細かくこの本で知ることが出来てよかった。訳者の小田嶋さんは、ソフトウェアメーカーに勤めておられるとのことだが、私には「ニュースグループ」という訳語がイマイチ具体的に実感できなかった。恐らく新しい話題を提供する人々とか集団という感じなのだろう。いくつか訳文調だなと思ったところもあったが全体的にはわかりやすくて読みやすかった。欲を言えば、ちょっとしたコンピュータ関連やネット関連のカタカナ用語に対する解説なども終わりにまとめて入れてくれれば、中毒になる程使っていてそれらの用語を十分知っている人ばかりでなく、その周りでネット中毒を案じているネットの世界を知らない人達にももっともっと分かり易い警告書となるだろう。十分一読の価値ある本と思う。著者は、心理学の助教授でオンライン中毒センターの創設者とのこと。著者のHPもあるそうなので、参考までにURLを貼っておく。