最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
Another Crackers | 文芸社 |
著者 | 出版年 |
本田 京子 | 2001年 |
若山 <tckw0545.ppp.infoweb.ne.jp>
無名の新人の作品らしい。装丁デザインの美しさと作品名の不思議さに惹かれて読み始めた。出だしは至って平凡な青春恋愛小説風。
平和なプロットの積み重ねで、物語は進んでいく。しかし、四章だての第二章後半になると主人公の「雄」が次第に壊れていく姿は重く深い。精神科の内部の様子が非常によく描かれている。第三章になると様子は一変して、もう一人の主人公である「富岳」と学生時代からの友人の
同性愛の物語になる。最初はこの展開に戸惑いを覚えるが、読み進むうちに、その謎が解けていく、という展開。物語が完結ではなく次への期待を持たせるところで終わっているのは、なかなかの思わせぶりだと思う。
文章自体は稚拙なところも見られるが、ところどころにはさまれた「散文詩」が、作品に奥行きと広がりを持たせ、非常に印象深い。
近藤 セツ <tckw0544.ppp.infoweb.ne.jp>
私も不思議な題名に惹かれて、値段の安さも手伝って
(税別1000円)読んでみました。
読み終わって思うには、私には本当の「主人公」という
のは、富岳ではなく友人の篠の方ではないでしょうか。
四章通じて登場すると言う点では、富岳と変わらない
のですが、筆者が描きたかったのはもしかしたら
富岳をずっと見つめ続けてきた篠という存在なのでは
ないかと・・・。
そう思ってみると、重要な存在であるべきの雄が物語の
途中で消えてしまうのもうなずけます。これは本当に
「消えてしまう」という言葉がふさわしい。しかし、
雄の存在は二人にとってとてつもなく大きくて、その
ために遠い回り道をするわけですね。
8月15日刊行になっているので、出たばかりですね。
筆者のプロフィールが簡単なので、どんな人なのか
よくわかりませんが、題名同様謎めいています。
「散文詩」のところが書体が「明朝」系から「筆文字」
系に変わっているというのは、ちょっと風変わりで
印象が強くなりました。