最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
「四億年の目撃者」シーラカンスを追って | 文春文庫 |
著者 | 出版年 |
サマンサ・ワインバーグ著,戸根由紀恵訳 | 2001年7月,原著は1999年A FIsh Caught in Time |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
ワクワクしながら一気に読了した。前半JLBスミス夫妻を中心に展開される追跡も刺激的だが,ぼくが個人的に面白かったのは,後半明らかにされるシーラカンスの分布である。つまり,インドネシアからコモロ諸島とマダガスカルまでというとオーストロネシアンの拡散を思い出してしまうので,ヒトが連れて行ったというのは荒唐無稽にしても(物語的には面白いが),シーラカンスを追ってヒトが拡散していったとかいうストーリーができると……などと,つい思ってしまうのだ。インドネシアでの鳥羽水族館の動きについて,「天皇からの直々の,そして緊急の命によるものと思われた(p.258)」というのも面白い。そう「思われた」根拠はしらないが,もし根拠なしに日本の無理な動きの原因を「天皇から」と解釈したのなら,それは誤解だと思う。ケンブリッジ出身の取材力もあるジャーナリストがそう考える背景を想像すると,なかなか示唆に富んだ記述と思う。