最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
ロボット21世紀 | 文春新書 |
著者 | 出版年 |
瀬名秀明 | 2001年7月 |
中澤 <k1-1.humeco.m.u-tokyo.ac.jp> website
ベストセラー作家にして科学ノンフィクションライターとしても活躍している著者が,自分の専門とは畑違いのロボットサイエンスを丹念に取材して書き上げた意欲作である。ロボット研究の現在に対して,AIBOやASIMOなど現物の開発現場の総当り的なレポートに基づき,自然な動きの開発がいかにして実現されてきて,それを自律的に行うためには身体性の知覚(「動作の節目を見抜く」とか「開放系で研究しなくてはいけない」とかいった言葉に端的に表れている)を定式化することが今後重要になってくる,といった何人もの研究者の言葉の紹介が印象的だ。
おそらく,そこから著者が訴えたいのは,そのためにはサイエンスとテクノロジーの融合,脳科学と情報科学の統合といった分野横断的な研究が必要になってきて,その先にはいかに社会においてロボットが存在位置を見つけていくかといった意味で社会科学も含めた展開によってロボットサイエンスは総合科学になっていく,というパースペクティブだと感じた。
あまりに大部で盛り沢山な内容のため,読者として消化不良になってしまった気もするが,ロボット研究の現在を知るための教養書としては読んだ価値はあったと思う。