最終更新:2019年2月13日(水)
書名 | 出版社 |
リセット | 新潮社 |
著者 | 出版年 |
北村薫 |
がんりょ <acca1aac093.tky.mesh.ad.jp> website
初めて乗るジェットコースタの爽快感
はじめは淡々とした文章が続き,「何がおきるのだろう」という期待とともに,「たいしたことないじゃん」という軽い失望を覚える.しかし,後半になり,坂を登りきったとき,一気に今まで少しづつ伏線としてためてきた,位置エネルギーが運動エネルギーに変わるのだ.その後は読者は北村ワールドに振り回されることになる.
本作でも,「ジェットコースタ感覚」が十分楽しめる.病床の男の回顧,戦時中の女学生の生活,一人暮らしの編集者と少年など,一つ一つは生活雑記のように見える文章である.これが,後半で一つ一つに意味があることが分かった時の爽快感はたまらない.
妻帯者の評者は,もし妻とこうなったらと考えるとぞっとすることもないではない.まあ,北村作品で現実問題を考えることがおかしいのであって,筆者と作り出す優しい世界を楽しめばよいのだ.